雑念昇華

煩悩消化

田舎者は都会を歩くだけで警察に捕まる

 

 

俺は超田舎者だった

どれだけ田舎者かと言うと最寄りのコンビニまで車で15分かかる程

 

最寄りの駅まで徒歩1時間以上

電車は2時間に1本

 

思春期を迎えた俺は

猪の子どもを素手で捕まえたり

キャンプ場を猿から守ったり

そんな日常だった

 

一方

妹は小学生ながらマセていて

ギャル雑誌を読み漁ったり

カラオケに行きたいなどとほざいたりしていた

 

そんなある日

俺に一大イベントが訪れる

 

「渋谷の109に行きたい」

妹のまさかの一言その言葉が父を動かした

 

「その昔、東京に住んでいたことがある」

 

「その昔」はガチで父の口ぐせ

 

こうしてザッキー家の渋谷行きが決まった

メンバーは父母俺妹

 

正直109を知らなかったけど

お店なんだろうと予想はついた

 

当時の手持ちで一番ハデだった真っ赤なダウンを装備して

東京モンに舐められまいと気合いを入れた

 

高校生になって

ついに渋谷に初上陸

 

渋谷に着いた感想は「人が多すぎ…」だった

 

豆鉄砲を食らった鳩のような顔の俺に対し

父は鉄砲玉のように飛び出した

 

迷いのない足運び

(へー、本当に東京住んでたんだな)

と少し感心した

 

当時の父はゴリゴリの亭主関白で

振り向きもせず

ズンズンと歩いて行った

 

 

母と妹

 

 

5メートル間隔くらいで編隊を組んでいた

 

(家族にペース合わせろよ…)

 

思春期の俺は父がみんなにペースを合わせるべきだと考え

急がずチンタラ歩いていた

 

父が目的地に到着した

 

 

交番だった

 

 

いや…

迷ったんかい

 

 

 

しかも何故か母も妹も交番に入っていき

みんなで聞いていた

 

 

いや…

一人でええやん

 

 

俺は交番に入らずに近くで待っていた

 

 

目的地を聞いた父は再び鉄砲玉になった

 

続いて母と妹

 

続いて俺

 

続いて…新メンバーがいた

 

お巡りさんだった

 

 

 

 

母と妹

 

 

お巡りさん

 

編隊が再編成された

 

 

そのまま300メートル程歩いたとき

 

 

「ちょっとキミ!」

 

俺の真っ赤なド派手ダウンの右腕が

お巡りさんに腕を掴まれた

 

「ちょっとキミ!あの人達とどういう関係?」

 

凄い形相だった

 

 

 

いきなり息子がお巡りさんに捕まった異常事態

母と妹は振り返り

父もようやく振り返った

 

「家族…ですけど…」

 

お巡りさんから見たら

5メートルおきに同じ顔が四つある

 

「あぁ…」

 

それだけ言い残し

交番へと帰って行った

 

そりゃないぜポリスメン

 

 

 

 

(何が起きた?????)

 

 

 

 

謝られなかったとかそんなことより

家族と歩いていただけでストーカーと間違えられて警察に腕を掴まれたことのショック

 

そして一瞬で釈放された安心感

 

俺は頭が真っ白になった

 

 

 

この1日で

田舎が一番だと悟った

 

マサラタウンには何もないけど

ベッドで全回復出来る

 

そういうことです

 

 

 

田舎者のみなさん

渋谷に行ってはいけません

 

捕まります